理学療法士は患者と一対一で密接な関係を築き、治療やリハビリを行う職種です。そのため、離職時には担当患者や施設の運営に与える影響を慎重に考慮する必要があります。特に、患者の治療が中断されないようにする配慮や、施設基準の維持に関わる点は重要です。
本記事では、理学療法士が離職する際に押さえるべきポイントについて解説します。

1.担当患者への影響を最小限に抑える

① 患者との一対一の関係
理学療法士は患者一人ひとりと密接に関わりながらリハビリを進めるため、離職によって患者が不安を抱える可能性があります。患者への影響を最小限に抑えるためには、計画的な引き継ぎが必要です。
引き継ぎのポイント:
・患者のリハビリ計画や治療経過を詳細に記録する。
・後任の理学療法士に直接説明する時間を確保する。
・患者に対しても後任者への引き継ぎを進めている旨を説明し、不安を軽減する。
② 中断のないリハビリ計画の提供
リハビリが中断されると、患者の回復が遅れるだけでなく、症状が悪化する可能性もあります。計画的な引き継ぎを行い、スムーズな継続が可能な体制を整えましょう。

2. 施設基準維持の観点
① 離職が施設基準に与える影響
理学療法士の配置人数は、施設基準に直接関わる場合があります。例えば、運動器リハビリテーションを提供している施設では、配置される理学療法士の人数が一定数に満たない場合、診療報酬の減額や運営の制限が生じる可能性があります。
② 現行制度の確認
回復期リハビリ病棟や訪問リハビリなどでは、施設基準に基づき理学療法士の人員配置が求められています。
参考例:
運動器リハビリテーションⅠを提供できる施設は理学療法士の配置人数に応じて決定されます。この基準を満たさない場合、診療報酬が減額されるリスクがあります。
対応策:
・離職のタイミングを施設側と十分に相談し、新しい理学療法士が確保されるまで時間を確保する。
・後任者の採用が難しい場合は、短期間での復帰や非常勤でのサポートを提案する。

3. 離職時の適切な手続きとマナー
① 適切なタイミングでの意思表示
離職の意思は、少なくとも1~3か月前に施設側へ伝えることが望ましいです。特に、リハビリ施設の場合、後任者の採用や患者の対応に時間が必要なため、早めの相談が重要です。
② 文書での正式な手続き
退職届を提出することで、離職手続きが正式に進行します。施設との話し合いの内容や退職理由を明確に伝えるためにも、書面での提出が推奨されます。
③ 感謝の意を伝える
離職時には、上司や同僚、患者に感謝の気持ちを伝えることが大切です。特に患者には、自分の退職後も継続的な治療が受けられるように配慮している旨を伝えるといいでしょう。

4. 患者、施設、同僚とのコミュニケーション
① 患者への説明
担当患者には、退職の理由や今後のリハビリの体制について直接説明し、信頼関係を維持する努力をしましょう。
例: 「私の退職後も、リハビリがスムーズに進むように後任者にしっかり引き継ぎを行います」といった説明が安心感を与えます。
② 施設側との調整
離職のタイミングや後任者の選定について施設と密に連絡を取り、運営への影響を最小限に抑える工夫をします。
③ 同僚との協力
自分の退職後に発生する業務の引き継ぎを明確にし、同僚に負担が集中しないよう配慮します。

5. 人材紹介会社を活用する場合の注意点
① 紹介手数料の確認
理学療法士が次の職場を探す際、人材紹介会社を利用する場合があります。その際、紹介手数料が高額だと、新しい職場での待遇に影響する可能性があります。
具体例:紹介手数料が年収の20~30%を超える場合、施設側がその負担を補うために給与や福利厚生が抑えられるリスクがあります。
②適切な紹介会社の選択
適正な紹介手数料(年収の10%程度)を設定している紹介会社を選ぶことで、待遇への影響を最小限に抑えることができます。

まとめ
理学療法士が離職する際には、患者や施設への影響を最小限に抑えるための配慮が求められます。引き継ぎの徹底や施設基準を維持するための対応を行い、スムーズに新しいキャリアに進む準備を整えましょう。
プロフェッショナルな姿勢で退職を迎えることで、次の職場でも良いスタートを切ることができます。
